THIRTY THREE RECORD

アイスクリームスタジオ日誌"エアチェック"

Date : 2024.03.13 / Author:Yawn of sleepy

先日、ある先生にお誘いを頂いた時の話を書いておこうと思う。

その先生はとてもレアなキャリアの持ち主で、
録音技術からプロデュースワークなどなど、
現在は原盤管理にまで至るプロフェッショナルな大先輩であり、
アイスクリームスタジオにとってもとても大切な、理解と支援、
時に創作的な依頼を伝えて下さる貴重な存在だ。
私達の生意気な問いを許し、よく誘ってくれる人。
ここ最近のスタジオの作品感想を頂きつつ、
話題が故郷の思い出にさしかかった時のこと。

10代の頃の先生はエアチェックに明け暮れていたそうだ。
エアチェックとはラジオを録音すること。
聴きたいものを簡単に自由に選べない時代に
その価値を感じる放送を、記録、保存して収集することだ。

私は「ああ、やっぱり運命の仕組みとはそうなのか」と思った。
上京前の1人の青年が、溢れるほどの関心や情熱を傾けて
それをせずにはいられないままに、試行錯誤と学習、出会いを繰り返しながら、
価値を感じる音楽を、記録、保存して収集してきたのだ。
楽しく面白くそれはもう止まらなかったことだろう。

私が嬉しく美しく感じるのは、
先生のこれまでのキャリアや現在の仕事のかたちも同じように
試行錯誤と学習、出会いを繰り返しながら、
価値を感じる物事の、記録、保存、収集、管理であるという一致だ。

文章を読み書き続けてきたり、写真を撮り続けてきたり、
音楽を奏で続けてきたり、工作を続けてきたり
研究を続けてきたり、料理を続けてきたり、
競技鍛錬を続けてきた人もいるだろう。

あの人もこの人もその人も純粋な人は皆、
例外なくそのような運命や人生の形をしている。
純粋かどうかはわからないが私達にもアイスクリームスタジオがあるし
これも確かにそのような形をしている。

人は皆、願いにたどり着いていくものだ。これは必ずであって例外のないこと。
たどり着いている場所が、必然的に本当の願いそのものの形なのだ。
これからの人も必ずその形になる。正しい願いや強さとはそのようなものだ。

始まりのかたちがそのままに人生を運命を、
まさに命運を裏切らず当たり前のように形づくっていく。
なぜなら情熱と関心は口にせずともそれを果たさずにはいられない代物なのだ。

情熱や関心と人生は過不足なく一致する。
そして毎日の祝福の在処はこのようにしてそこかしこにあるものだ。

ーーー

他者の人生を愛おしく思える人は皆当たり前に知ってる事なのだとも思う。
まだ知らない人もいるのだとも思う。
だけど本当はほとんどの人が既にたどり着いている。
口にせず交わされ合わずとも、表明されていない願いのことも。

幸せとは内訳を語れるもの
信じるに足る本当に大切な音楽はそれらのあらわれであって欲しい。
また、それは必然であるし価値あるひと時にとって不可欠だ。

それは違うと言いたげな旧友の視線は
紆余曲折という言葉にまとめてポンと預けてかわしつつ、
ロングアンドワインディングロードでも思い出しながら今日はここまで。
また誰かと誰かで誘い合って次のテーブルを楽しみに。

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