創作への雑考 pt.28
Date : 2017.02.01 / Author:吉川 工
去年の3月に米グーグル傘下である、英グーグル、
ディープマインド社製人工知能Alpha Goが、
世界トップ棋士である韓国のイ・セドル氏に勝ちました。
Alpha Goには自ら学習するディープラーニングという機能があります。
今回の勝因はこのディープラーニングによるものだと言われています。
ディープラーニングとは、
人間の脳の神経細胞ネットワークを参考にしたシステムで、
一度学習したものを繰り返し反復学習する事で、対象への認識を深め、
すぐに反応出来るようになるというものです。
囲碁の手数は天文学的な数に及ぶと言われ、
その数を人工知能が把握し、人間に勝つ事は不可能だと言われていました。
更に、同月、人工知能と人間が共同執筆した小説が、
文学賞の一つである星新一賞の一次審査を通過しました。
星新一賞とは、作家星新一にちなんだ文学賞で、
人間以外の応募も受付けています。
2013年にスタートしたこの文学賞は、今年になって初めて
人工知能による作品の応募がありました。
人工知能による作品は1450編中、11編の応募があり、
その内の一編が一次審査を通過した事で、今回話題となったのです。
今、世界では人工知能の研究が革新的に進み
「SFの世界が描いた未来」
という形で僕達のすぐ近くまでやってきています。
人工知能は生活を便利にするという目的だけでなく、
人間の精神性にまで、その触手を伸ばしてきています。
僕は人間の持つ複雑な精神性が生み出すものが芸術だと考えています。
ですが、そんな人間特有の複雑な精神性による芸術的感性をも、
人工知能によって生み出す事のできる世界が現実になってきたのです。
一次審査を通過した人工知能による作品は、
全てが人工知能による完全オリジナル作品ではなく、
人間があらかじめ制定したガイドラインにそって
人工知能が文章を編んでいくというものでした。
ですが、ディープラーニングを続けていけば、
人工知能による完全オリジナル作品が生まれるのも、
そんな作品が人間の作品を超えるのも(あくまで一つの作品として)
そう遠い未来ではないのではないでしょうか。
シンギュラリティという言葉があります。
これは特異点を意味する言葉です。
人工知能が人間を超えた時に起きる特異点を指しています。
レイ・カーツワイル氏によると、
このシンギュラリティは2045年に起こると言われています。
人工知能が人間を超えた世界とはどのような世界なのでしょうか。
もしかしたら神話のように、この世界は元々、神々がいて、
現代の人間が人工知能を作ったように、神々が人間を作ったのでは。。。
神々によって作り出された人間がシンギュラリティを起こし、
やがて神々はこの世界から姿を消したのではないか。。。
人工知能がシンギュラリティを起こしたら、
姿を消した神々のように人類も、
この世界から姿を消さなければならなくなるのではないか。。。
そんな想像が頭の中で風船のように膨らんでいきました。
僕は何か一つのきっかけを元に思考の波紋が広がっていくような状態を
イメージのインフレーションなんて思ってます。
(このインフレーションには
宇宙創成のインフレーションをあてはめています。)
こういった閃き、想像がやがて作品となっていくので、
イメージのインフレーションは、やがてエネルギー量を増し、
ビッグバンとなる創作の源です。
人工知能も、このように電気信号を連鎖させて
プログラムという精神の中で、
イメージのインフレーションを起こさせているのではないでしょうか。
未来の社会がどうなっているかは分かりません。
僕が重要だと思うのは、人工知能が作品を作るという事よりも、
芸術作品に対して、自分自身がどのような反応をするのかという事です。
芸術は瞑想の中に現れる神と自分のように、
その作品と自分の間に生じるもののみを求めます。
この先、人工知能がどれだけ優れた作品を生み出しても
僕達は何も変わりません。
インプットとアウトプットを繰り返し、
唯ひたすら創作という反応を続けていくだけです。